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「足病変とフットケア」

【フットケア領域】    新古賀病院    石橋理津子さん
足病変とフットケア 創傷治療センター(通称:足外来)看護師長

褥瘡認定看護師
日本フットケア学会フットケア認定指導士
日本静脈学会認定弾性ストッキング・コンダクター
フットケアに使用する道具一覧
Vol.9  2011年4月 「足が痛いとき」②検査はどんなことするの?何がわかるの?
前回のエッセイの冒頭で、九州でのフットケア研究会発足のお知らせをいたしました。
その関係上、非常に多忙な日々を過ごしております。
その為、エッセイものびのびとなったことをお詫びいたします。(少し、言い訳です。。。)

すでに4月となりました。
あたりは桜吹雪です。ようやく待ちに待った桜はあっという間に風とともに去ろうとしています。はかないものです・・・。はかないからこそ美しい。
3月11日に発生した、東日本大震災の被災にあわれた方々には心よりお見舞い申し上げます。一ヶ月が経過した今でも多くの方々が避難所生活を余儀なくされておられるということ。寒気が強くいつまでも暖かくならない時期での被害、凍傷にかかった方々も少なくないと聞いております。また狭い避難所生活、やはり今回もエコノミー症候群対策が早くから叫ばれておりました。多くの方々が足に何らかの障害を来たしているのではないかと心配しております。
そのような中、ボランティアの方々が避難所で足浴をしている映像がTVから流れ、いろんなところに足が大事だと考える医療スタッフが増えてきていることを嬉しく感じました。 このような避難所生活、医療診断機器がないようなところでも、足病変の有無の見当がつく検査方法もなかにはあります。それらも含めてご紹介しましょう。

まず、前回のエッセイで「循環器科への受診」をご紹介しました。
足病変で一番肝心なところは足の血流ですよ、ということでした。
この足の血流の有無ですが、高い医療機器を使わなくても予測がつく検査があります。
1) 視診
まずはキチンと足を見ることが大事です。
POINT:足の色
皆さんは、しみじみと足の観察をした経験がありますか?爪をきるときだけ?お風呂にはいるときだけ?
明らかに、片方だけに赤みがかった足や、薄紫に変色している足であれば何らかの異常があると考えても良いですね。両方の足を並べて見比べてみましょう。
以外と左右の足の形、長さが違うことも発見できるかもです。

2) 触診
次は、足にふれてみましょう。
POINT①:温度
左右の足を触ってみて左右差の温度に違いを感じた、明らかに冷たい足には要注意です。
POINT②:動脈触知
足の血流の有無を確認するときに必ず確認することが、動脈の触知です。
足の動脈で表面の皮膚から直接、動脈の拍動が伝わる部位が4ヶ所あります。
上から、ソケイ・膝の裏・足の甲・くるぶしのあたり。
医学用語で表現すると、外腸骨動脈(そけい)・膝下動脈・足背動脈・後けい骨動脈です。
この部分を指で触れてみてください。血流のある足であれば動脈の拍動(ドクッドクッドク)と伝わってくるはずです。この検査は簡単且つ非常に重要な触診検査です。
しかも、場所だけ把握すれば医療従事者ではなくても確認することが容易にできます。

最低、この2ヶ所だけでも触れる場所を確認しておき、気になる場合は触れてみましょう。
足背動脈に関しては約20%の方が正常でも触れないことがあるといったデータもあります。
そのような場合は視診もあわせて検討が必要ですね。
3) 医療機器を使った足の血流検査
視診・触診で異常かな?と思われる場合は、より精密な検査が必要となってきます。
ここで検査技師、放射線技師の出番となります。
①ABI検査(足関節/上腕血圧比)Ankie Brachial Pressure Index
この検査は、足の比較的おおきな血管のつまり具合を診る検査です。動脈硬化の程度の指標となる検査のひとつで、「血管年齢」がわかる検査とも言えますね。
両腕と両足首の4ヶ所の血圧を同時に測定し、機器が自動的に指標となる値を割りだします。このような機器がない場合は足関節で測定した収縮期血圧を上腕収縮期血圧(左右高い方を用います)で除した比で算出することが可能です。
正常は1.0以上。
0.95未満で血流障害が示唆されます。ここで注意を要することが1点。
糖尿病患者さんのように血管が石灰化してしまっている場合は、このABI値は高くでることがあります。値が1.3以上になった場合は血管の石灰化があり、正常な血流評価ができなくなります。
しかし、簡単に短時間で検査が済むため糖尿病患者さんや透析患者さんたちの足病変スクリーニング法として活用しています。
この検査は、ベッドに寝た状態で測定します。時間は5分程度です。

②下肢動脈エコー
超音波で足の血管の形状、狭窄部位の検索、狭窄の程度、血流の有無などを診る場合に用います。この検査はベッドに寝た状態で検査を行います。時間は病変によって違いますがおおよそ30分前後です。痛みもなく低侵襲の検査です。

③膚還流圧測定器(SPP)skin perfusion puressure
レーザードプラーを用いて皮膚レベルの微小循環を診る検査方法です。
この検査方法は血管の石灰化に左右されることなく、その部位の血流が測定できます。
局所の血流の有無が即座に判断できるため、足の傷がある場合の治療選択方法に非常に有用な検査方法です。このSPPが出てきたおかげで大切断を免れるケースも増えてきたのではないかと思います。
健常者で90以上。創傷治癒が可能といわれる値は40以上
30以下では何らかの血流改善治療がなければ、創傷治癒は望めないと判断することができます。
ただ、どのような検査にも欠点がひとつ。
非常にデリケートな機器のため騒音や、ちょっとした振動、動きによって測定が不確実になることがあります。

④下肢3DCT
現在の画像診断機器の開発は眼をみはるものが多く、この3DCTもその中のひとつでしょう。年々進化しています。これは3次元的にデータを取ることが可能です。
血管の狭窄・閉塞部位、石灰化の様子、血管の走行などを15分~20分程度で撮影、確認することができます。
ただし、この検査は造影剤を使用するため、腎機能障害がある方は事前に補液を必要としたり、または撮影が出来ない場合があります。

そのようなときには、直接、⑤下肢の血管造影を施行することもあります。
この検査は足の付け根から動脈に直接穿刺をし、カテーテルを挿入して少量の造影剤を用い、直接血管の内腔及び血液の流れ具合などを見る検査です。検査後、数時間の安静を要することや、穿刺した部分からの出血などのリスクも想定される侵襲の高い検査となります。
従って、下肢エコーやSPPなどの低侵襲検査である程度の血流障害を確認し血管内治療が必要と示唆された場合に行うケースが多いですね。

以上、5種類の検査方法をご紹介しました。
足病変が疑われる場合はABI、下肢エコーである程度の目安がつきます。この2つの検査は痛みを生じず、短時間で行えるため定期的に見ていくと足病変の早期発見早期治療が可能となりますね。是非、積極的に検査を行っていただきたいと思います。

検査とはとかく、恐怖心を煽るもの・・・(私もドキドキします。。)
このように事前にわかっていると恐怖心も和らぎますね。

(予告編)
次回は循環器での足病変に対する主な治療内容をご紹介していきましょう。
まだまだ、先はながいですよ。。。
これから血管外科・糖尿病関連・形成外科の創傷関連・切断レベルなどなどのお話しにつながっていきます。
その先の日常生活への援助、靴・装具、精神面でのケアなど・・・実に奥が深いのも「足」なのです・・・。
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