carenet




<学会・イベント訪問記>

ベットまわりのサインづくり研究会
訪問日 2009年9月30日
東邦大学 医学部看護学科 高齢者看護学研究室
横井 郁子教授(工学博士)
ピクトグラム」という言葉がある。一般に「絵文字」「絵単語」などと呼ばれ、何らかの情報や注意を示すために表示される視覚記号(サイン)の一つで、街で見かける車いすや非常口の場所を示すマークである。当然、病院の中でも使われている。このピクトグラムを患者さんと医療従事者のコミュニケーションツールとして活用できないかと発足したのが「ベットまわりのサイン作り研究会」である。この研究会の存在をあるニュースで知った時に「看護の本質である」と直感的に感じ、取材させていただいた。
【医療従事者が共有すべき情報を視覚記号化】

「ピクト」を見れば、目の前の患者さんの受け持ちでなくても、おおよそのADLが把握できる。
【看護師が状況に合わせて掲示】

患者さん自身も自分が置かれている状況をすぐに確認することができ、家族とも情報を共有できる。
【無駄に難しい現状の申し送り】
看護師において緊張する一場面、それが「申し送り」。患者さんの情報を「共有」するための作業だ。この申し送りが機能しないと病院は膨大な時間をロスし、患者さんを不安に落とし入れる。以前は、看護師同士、もしくは看護師と医師の間で行われてきたが、近年チーム医療の名ものとに多くの職種と情報を共有する必要が出てきた。

この情報伝達の中枢にいるのが「看護師」である。当然、高度な医療知識を必要とする情報もあるが、私の経験からすると、「歩いていいのか」「水を飲ませてもいいのか?」「食事制限はあるのか?」といった「日常生活の制限」に関する情報の問い合わせが最も多い。特に患者さんは、どう制限されているのかを確認するために看護師に尋ねると「担当に聞いてまいります」と不満の残る答えが返ってくる。この全く生産性のない作業に膨大な時間を費やしていると感じる。
【注意喚起ではなく、あくまでもコミュニケーションツール】
そこで、日常生活動作における本人の活動制限をひと目でわかるように「ピクトグラム」を用い20数種類のサインにまとめた。あくまでも目的は、コミュニケーションであり、注意喚起や看護師のための患者情報ではない。つまり、「水曜日入浴」といった情報は、対象とはならない。

このピクトグラムがあることで、患者さんは自身の活動制限を視覚から理解、確認することができ、受け持ちではない看護師であっても、多くの質問に答えられる。面会にきた家族も、ピクトグラムを見ることで患者さんの日常生活動がひと目でわかり、この情報をもとにコミュニケーションも活性化しているという。
ベットまわりのサイン作り研究会
2008年10月に医療施設での使用を前提とした医療看護支援ピクトグラムを開発しました。これは社団法人日本サインデザイン協会の推奨を得ています。「いのちを見守るコミュニケーションデザイン」第1号です。
<目的>
療養生活支援を円滑にするコミュニケーションツール
  • そのベッドに横たわる患者さんが
  • 治療しながら
  • できるだけいつもと同じ生活を送ることができるために
  • そこに集まる人たち(病院全職員,患者・家族,面会者)が
  • 何らかの支援(声をかける,人を呼ぶ,介助する)を
  • しやすくする(情報共有),したくなる(ピクトグラム)ツール
<対象となる情報>
 日常生活に関する情報を基本とします。そのピクトグラムが表示されることで、たまたま通りかかった人でもその方への配慮ができ、それが安全・安心につながるものとしました(ホームページより抜粋)
【編集後記】
患者さんの情報を知るためには、ナースステーションの「カーデックス」に頼らなければならないという常識が覆るかも知れないと衝撃を受けました。看護師は、極めて多くの情報を処理していきますが、その多くを「記憶」に頼らなければいかず、そのことが不安やミスを誘発しているといえるでしょう。現代看護の本質的な問題を解決する革命的なアイデアだと思います。「医療支援ピクトグラムを使ってみたい」という方は、ぜひ横井教授に連絡を取って見てください。特に、看護研究のネタに困っている方、おススメです!!
あおやぎ