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<学会・イベント訪問記>

北原脳神経外科病院  作って学ぶ 脳解剖セミナー
訪問日 2009年11月29日
主催  北原脳神経外科病院 模型部
脳血管の解剖は簡単ではなく、勉強しようとしては何度も挫折した・・・。そんな経験をお持ちの方は少なくないだろう。私もその一人だ。今回、当サイトで何度かご紹介させていただいた北原脳神経外科病院で「作って学ぶ」という興味深いキャッチフレーズでセミナーを行っていると伺い、取材させていただいた。
【多種多様の参加者】
今回のセミナー参加者は約50名。個人的には、看護師が多いのかと思っておりましたが、看護師や看護学生、そして理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、放射線技師などが参加されていた。脳血管への興味の高さが伺える。
【林 祥史医師によるレクチャー】
当セミナーの発起人である林医師による脳や血管に関する講義を受け、自分たちの目的を再確認。CT写真や脳の模型を使用したセミナーを受けられるのは解剖生理の意味で非常にありがたい。参加者たちは、熱心に聞き入っていた。
【脳血管の制作へ】
【道具の確認】
脳血管を制作するための道具一式。この時点では、何が何だか全くわからない・・・。

もともとは、フラワーアレジメントのための道具だそうです。はたして、上手にできるのか・・・!?
【血管の制作】
制作図に基づいて針金を成型、フローラテープという特殊なテープを巻いていく。慣れないと難しいが慣れると楽しい。2本3本とどんどん巻いていこう。

↓とりあえず、制作図と同じ形の血管が出来たものの、まだ脳血管とは言い難い状況だ・・・。
【血管を結合させることでシルビウス裂が出現!】
前大脳動脈と中大脳動脈を結合し、なんとなく脳血管造影の写真で見覚えのある形が出現。

←ハサミの入っている場所に注目
脳の手術の際に脳を分け入っていくシルビウス裂が出現しました。私は、脳動脈瘤の手術を何度となく見ましたが、脳血管の解剖はいまいちわからず、シルビウス裂が何なのか、理解できませんでした。しかし、今回、自分で中大脳動脈を制作することで血管の走行が理解でき、目からうろこでした。
脳神経外科病棟や手術室で勤務される方には、本当におススメです!!
【血管の支配領域をMRIの画像とリンク】
すべて完成させると、向かって左側が左脳の血管、右側に、それぞれの血管の支配領域が色分けされたMRIが配置される。脳血管とMRIを見比べることで障害部位の責任血管がよくわかる!

血管にナンバリングをして完成。
改めて模型部のこだわりを感じます。
【MRAと模型を再確認】
完成後、林医師によるおさらいです。実際のMRAと自分の制作した模型を見比べながら復習できる。これほどわかりやすいセミナーはほかにはないでしょう・・・。MRAほか手術、血管内手術などの紹介もありました。
【満足の出来です】
こちらが、私の制作した脳血管とMRタワーです。
脳の血管分布、特にシルビウス裂と小脳を栄養する血管を上手に再現できたと自負しております。
【ボランティアサークル あしたばのみなさん】
北原脳神経外科病院のボランティアサークル あしたば のみなさん。セミナーに使用する針金の準備やお弁当の受け渡し等を手伝っておられました。北原脳神経外科病院の縁の下の力持ちですね。
【参加者さんのコメント】
アール医療福祉専門学校
看護部 学生 伊東 響子さん

脳神経外科に興味があったという伊東さん、学校にセミナー案内が来ていたために応募したという。学校の授業と違い3Dで学べるということに感動したと。免許取得後は「脳神経外科で働きたい」と意欲をのぞかせた。
北原脳神経外科病院 模型部のみなさん
【部長】林 祥史医師(写真右上)
【副部長/広報】渡部 ちはる 作業療法士
【副部長/講師】中村 奈津美 看護師
【画像講師】平口 心 放射線技師

解剖は、どうしても個人で勉強するのが難しい。立体としてとらえる必要があるとそれぞれが考えていたところ、模型制作の経験のある林医師に背中を押され、模型部を設立。現在は8人のスタッフで運営されている。会を重ねるごとに改善を続け、評判は上々、遠くは北海道から駆け付ける。1日を通じ、スタッフの笑顔が印象的でした。
【林モデル】
こちらが、林医師制作の脳血管模型。脳幹や静脈系までも制作してある圧巻の出来栄え。さすがです!
【会場風景】
【編集後記】
「学生のころに参加したかったなぁ」と皆さん口をそろえて言っていました。しかし、ある程度臨床で経験を積むことで改めて「解剖」の重要さを知るということもあるでしょう。こういったセミナーを実費程度で提供してくれるのはありがたいですね。模型の制作を伴うセミナーの運営は簡単ではなかったと思います。でも、「作ればわかる」この気持ちを分かってほしいというスタッフの熱意が伝わってきました。あっという間に1日が過ぎ、とにかく楽しかったです。年に3回以上は開催していきたいとのこと。脳神経に興味のある方は、定期的に北原脳神経外科病院のサイトをチェックしておくことをお勧めいたします。
あおやぎ