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<病院訪問記>  面白い取り組みを行っている病院を紹介させていただいております。

守谷慶友会 つくば血管センター
訪問日  2007年7月21日
【所在地】茨城県守谷市立沢980-1
つくばエクスプレス守谷駅にほど近い茨城県守谷市慶友会 つくば血管センターを訪問させていただいた。 守谷市は、人口 56974人でつくばエクスプレスにより、都心まで一時間とかからないロケーションから近年都市成長ランキングで常に上位に位置する田園新興都市。 そこに、2007年春、前東京医科歯科大学外科・血管外科教授の岩井武尚(いわい たけひさ)医師を迎え、血管の病気を専門的に診療するつくば血管センターを開設した。 聞きなれない「血管センター」、どのような試みをしているのだろうか?

2007年、秋の改修に向けて工事の始まっている病院エクステリア
広々とした受付カウンターと、専門外来として新設されたつくば血管センター
【対象疾患】
閉塞性動脈硬化症、バージャー病、動脈瘤、機能的狭窄(レイノー病、膠原病)、静脈瘤、深部静脈血栓、リンパ浮腫など
【設備】
バスキュラーラボ(無侵襲血管機能検査室)、CTアンギオ装置、MRIアンギオ装置、 経皮血管形成・ステントグラフト術、透析用内シャント造設、血管ドック、血管治療相談(セカンドオピニオン)
【診療風景】
バスキュラーラボ(無侵襲血管機能検査室)、CTアンギオ装置、MRIアンギオ装置、 経皮血管形成・ステントグラフト術、透析用内シャント造設、血管ドック、血管治療相談(セカンドオピニオン)

30年間付き合っているというバージャー病も、岩井医師との出会いでもうすぐさよならできそうと笑顔の患者さん。「今月末にはプール、来月には山登りだな」と明るい未来を具体的に提案。
静脈のうっ滞が悪化の元。
下腿までの圧迫包帯がコツだ。
患者さんもよく理解しており、自宅では自分でやっている。
3日前に閉塞性動脈硬化症で緊急手術。
見事救肢に成功!し、患者さんも笑顔で食事中。
静脈瘤が専門の佐藤医師が患者さんの不安を取り除く。
静脈瘤の患者さんは1000万人とも。
立位で静脈ドップラー。静脈の特性を丁寧に説明し、患者さんも納得。佐藤医師は、「軟膏塗るのも僕の仕事」と人一倍診療に対する気持ちが熱いセンター長も絶大なる信頼を置いている。
【医師インタビュー】
岩井医師はじめ、看護師や総務の皆様には一日を通じて本当に親切にしていただいた。 「血管診療の必要性を広めたい」という情熱をひしひしと感じました。

岩井武尚(いわい たけひさ)医師(写真中央左)
つくば血管センター長、バージャー病研究所長
前東京医科歯科大学外科 血管外科教授
日本静脈学会理事長 
日本血管外科学会名誉会員
日本脈管学会理事

< 岩井武尚医師の出版物 >
・監修・著書 血管外科手術段階式マスター100選
・編集     手術患者のケアマニュアル   その他多数!!
岩井医師は、国立大学の教授を退官して「本当は、ゆっくりしたいところだけど血管診療がこの地域には必要でねぇ」 と笑顔で始まったインタビュー。血管管理は、メタボリックシンドロームと同じで予防と治療が必要だが、専門家は決して多くない。 東京や埼玉、千葉は増えてきたが茨城はまだまだだで院内での認識もまだ十分とは言えず、 つくば血管センターの課せられた課題は少なくない。今後は、つくば血管センターを予防や治療の拠点にしていきたいという。 「今」だけでなく患者さんの「未来」についても気さくに話すその人柄は、患者さんや看護師からの信頼も厚い。 初めてお会いした私に対しても丁寧に説明していただけた。

また、岩井医師が絶大なる信頼を置く佐藤医師にも、お話を伺った。 静脈瘤手術は、局所麻酔で手術を行い、静脈抜去(ストリッピング)と静脈硬化療法を併用し、 手術室へは歩いて入室し歩いて帰室が可能という。3泊4日の手術プランだが、それでも手術の予約は多い。 手術のことだけではなく傷の治りや保険診療のほか自由診療があることなどもきちんと説明しておられました。

血管疾患は、今後も増えると考えられ日常生活においては非常に大きな問題を含みます。 今回は、開設して3ヶ月足らずの血管センターだが、将来に対するビジョンを伺うと期待せずにはいられない。 また、お邪魔したいと感じました。
【看護師インタビュー】
看護部長の岩木さん(写真;左)と血管センター看護師の柴田さん
病棟の看護スタッフ;記録中にお邪魔しました(^^)
インタビューに応じてくれたのは、看護師歴30年という柴田啓子看護師。
血管センターがオープンして一番の変化は、血管疾患の患者さんの他院からの紹介が非常に増えたことだ。 開設前はそれほど意識していなかったという血管疾患だが、診療に関わるようになりその患者さんの多さに驚いたという。 また、岩井医師や佐藤医師が非常に親切で看護師に対しても様々な知識を教えてくれるので 刺激を受けつつ勉強をしているとのことでした。「やっといい先生にめぐり合えた」特に印象に残っている患者さんの言葉だ。 開設して3ヶ月あまり。診察日も検査日も手術日も予定いっぱい。 今後は、診察日を増やして対応していく必要があるという。 忙しい医師を支えつつ、患者さんのプライバシーを細やかに配慮し、不安の有無を丁寧に聞き、 「わからないことがあったら、いつでもどうぞ」と笑顔を絶やさない。 また、患者さんだけでなくクラークさんに対しても細かく指示を出す。 忙しい血管センターを支える看護師の横顔を垣間見た。今後、病院合併を控え、血管センターの更なる拡充を予定しているという。 血管疾患で悩む患者さんが少しでも少なくなる日が来るよう皆さん、頑張っておられました。
【患者さんインタビュー】
今回、患者さんインタビューに答えてくれたのは、千葉県にお住まいの60歳の男性のKさんという患者さんでした。 Kさんは、30年以上前にバージャー病を患いタバコをやめて一時は回復したかに見えたが、15年前に足の甲に潰瘍ができた。 様々な治療を試みたがなかなか回復の兆しはみえず一時期は「俺はこの脚と付き合っていくしかないのか・・・」 とあきらめたこともあったそうです。しかし、血管センターが開設され、専門家である岩井医師に診察してもらい、 その後みるみる潰瘍がよくなり、「夏には山にも登れるだろう」太鼓判を押された。 私が拝見したときには、決してひどい潰瘍ではなかった。 しかし、今見ればそうかもしれないがKさんにとっては何十年も悩まされてきた原因からやっと開放させる時が来る。 診察後、病院の印象を聞くと「病院に来るのが楽しい。こういう専門外来ができることはいいことだ。 先生は大変かもしれないがこれからも期待しています。」と終始笑顔だった。 実は、Kさんから、E-Mailが届いた。岩井医師はじめ血管センターに対するお礼がほとんどであり、感謝の気持ちが伝わってくる。 県をまたいでやってくるKさん。つくば血管センターの存在感を感じずにはいられない。
【看護部長さんからのメッセージ】
今秋(2007年)に、守谷慶友会は、守谷記念病院と合併し、血管診療の拡充とさらなる急性期病院へと変貌を遂げる予定です。 そのため、血管疾患その他に興味のある看護師さんを募集しています。 見学は随時可ですので、興味のある方はぜひ連絡してみてはいかがでしょう。

血管疾患とは、切っても切り離せない「喫煙問題」について聞いてみました。 現在は、禁煙外来はないものの医師は積極的に禁煙指導を行ったり、禁煙支援補助剤を処方している。 今後、病院機能評価の認定を目標に敷地内の禁煙を目指し頑張っていくとともに、 看護スタッフが日常的に禁煙指導ができるよう教育をしていきたいとのことでした。 これから、どのように進化していくのか、非常に楽しみな病院です。
【編集後記】
インターネットで病院を知り、取材の申し込みを行った時から、取材を終えるまで総務課のスタッフから医師、看護師の皆様全員がとにかく親切な印象を受けた。 患者さんの「病院に来るのが楽しい」という言葉や、血管センター看護師の「先生がとにかく親切で勉強になる」と言った言葉にも納得だ。 健常人ならば誰でもできる「歩く」という動作。しごく当たり前だが、歩けなくなり初めてその不便さに気がつく。 今回、バージャー病や下肢静脈瘤の診療を垣間見て大勢の患者さんが悩んでいるということに気づかされた。 「一緒に山に登ろう」と励ます医師や「不安なことがあったらなんでも聞いてください」と看護師。 梅雨のさなか、取材の帰りには雨になってしまったが、梅雨は必ず明ける。 同じように血管疾患で悩む全国の患者さんにとっての梅雨明けもそう遠くはないと実感ができる取材となった。
あおやぎ