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<病院訪問記>  面白い取り組みを行っている病院を紹介させていただいております。

聖麗メモリアル病院
訪問日  2008年12月4日
【所在地】〒319-1235 茨城県日立市茂宮町841番地 TEL 0294-52-8500/ FAX 0294-52-8511
【病床数】72床
【診療科目】脳神経外科
【脳の健康へのこだわり】
聖麗メモリアル病院は、脳神経外科の専門病院である。テレビなどメディアに紹介されることも少なくなく、ある雑誌の病院格付け特集では、毎年、脳神経外科領域で全国で10本の指に数えられる。 昭和58年に開設し、満を持して平成20年9月に新病院が完成した。 都市部ではないこの地域で全国トップクラスの医療を実践している。 全国から患者さんが集まるこの病院の秘密を探ってきた。
【徹底した専門志向】
脳神経外科領域の疾患は、大きく分けると脳梗塞と脳出血といったいわゆる脳卒中の急性期と回復期、そして腫瘍に分けられる。 聖麗メモリアル病院の特徴は、脳神経外科領域のどのジャンルの疾患に対しても確実な対応ができるというのが大きな強みだ。 救急車は、24時間対応で集中治療体制や手術体制も充実している。 そして、後述するがサイバーナイフという脳腫瘍に対する大きな武器もある。 自分たちが脳の専門家であり続けることにプライドを感じる。
いま日本は、いまだかつてない超高齢化社会へと突入しようとしている。 脳血管障害は、日本人の死因の第3位、そして寝たきりの第1位である。 この現実がある今、当然、この領域の専門家たちに寄せられる期待は少なくない。
開設以来、患者さんに選ばれ続けた聖麗メモリアル病院。この病院が社会にもたらす影響は計り知れない。
【外来受付風景】
年々増え続ける救急搬送と手術件数。治療成績の良いことも手伝い、外来患者数も比例して増加傾向にあるという。 現在は、外来の枠を増やして対応しているとのことだった。 医師やその他のスタッフに対する負担は少なくないが、何よりそれを誇りにできるというのは医療従事者として喜ばしいことである。 突然の発症で救急外来を受診し、治療が奏功して外来に笑顔でやってくる。 こういった一連の体験が、医療従事者を元気にさせる。 明るく談笑する患者さんとその家族が印象的でした。

【充実したアメニティ】
院内を回り、特に感じたのが待合場所の多さだ。 理由まではわからないが、脳血管障害の患者さんの多くは、家族等の付き添いで病院に来ることが予想される。 患者さんにとって良い病院であることは、同時に家族によってもよい病院であることが求められる。 もし、私の家族が倒れたなら、ぜひ「こちらの病院がいいなぁ」と単純に病院設計の優しさを感じた。

【専門病院としての心臓部;手術室】
手術室は、3部屋あり24時間体制で緊急手術に対応できる。 奥に見えるのが、脳神経外科の必需品、手術用顕微鏡である。 この手術室のすごいところは、手術用の顕微鏡に映し出される映像が、院内の各部署で各医師が確認することができる。 専門領域に入ればはいるほど、当然一人では判断できないことも出てくる。 10人の医師がいれば10通りの意見が出てくるだろう。 それは、学会などで活発に意見交換されることからも伺える。 脳神経外科領域の専門病院である聖麗メモリアル病院では、トップレベルの病院であり続ける必要がある。 そのため、手術室に入っている医師は2~3人でも、他の専門家の意見がほしい時はいつでもどこでも他の医師に手術野を確認してもらい、手術を進めることができる。 顕微鏡を使うといっても手術は実験ではない。 そこにいる患者さんへ最高のパフォーマンスを提供するための準備が整っているというわけだ。

【増加する手術】
72床の病院で3部屋の手術室は多く感じるかもしれない。 しかし、10年前300件だった手術件数は、2008年700件に届こうとしている。 待つことの許されない脳血管疾患に確実に対応するための準備ができている。

写真右は、手術の際に手を洗う場所です。今まで見てきた中でもっとも豪華な造りでした。 ただ、神経戦ともいえる脳血管手術、精神統一のためには広く美しい手洗い場は、安い投資かもしれません(^^)


【集中治療室】
個室4床とオープンフロアに6床の集中治療室。予定手術から緊急手術、時には頭部外傷も受け入れる。 不夜城と化すこともあるわけだが、取材当日も看護師たちは、忙しくも笑顔で働いている。 「患者さんがよくなっていくのをお手伝いできるのが楽しい」と語る看護師たち。 病院の治療成績が働くスタッフのモチベーションアップに大きく貢献しているようだ。

こちらは、救急カート。患者さんの容体が急変した際に使用するごく一般的なものだ。 おそらくここが定位置なのだろうが、カートの上の壁に「カートに揃えておくべきもの」がラミネート加工された写真で掲示してある。 文字だけのチェックリストはよく見かけるが、これなら、誰でも準備することができるし、何より漏れがない。 一目見れば何がないかわかるからである。患者さんの容体変化は、珍しいことではない。 しかし、それらに確実に対応していかなければならない。 いつも一番近くにいる看護師が、いつも頼りになる存在であるために・・・。
集中治療室に「寝袋」が置いてあった。「忙しい時にスタッフが寝るんですか?」と行くと 「そうなんですよ~」と冗談を言いながらその使用方法を教えてもらった。この寝袋、外側がつるつるしている。 で、患者さんをベットからストレッチャーに移動する際に患者さんを乗せてするっとひっぱる。 すると、驚くほど簡単に移動が完了するようだ。 言葉での説明は難しいが、同スタッフに「使ってみてどうですか?」と尋ねると一同「とても楽になりました」と声を揃えた。 こちらの写真をヒントに皆様の施設でも試してくださいな。

注;いくら忙しくてもこの寝袋にスタッフが寝ることはないのでご安心を…とのことでした(^^)

【病棟風景】
病院の周りに高い建物はなく、一日を通して朝日から夕陽まで病室に自然な採光を得ることができる設計で、廊下は広く(ストレッチャー2台が余裕ですれ違える)間接照明を取り入れ適度な明るさを保っている。 お見舞いの方に話を聞くと「この病院は、医療もそうだけど環境が最高です」と話していました。 病は気からといいます。ありがたいことですよね。
突然の訪問だったのにも関わらず、ナースステーションもきれいに整っていました。 ちょうど検温から帰ってきたところで記録中でしたが、皆さん表情穏やかでお仕事をされていたのが印象的でした。 突然の取材にも快く対応していただけるのは、心の余裕と仕事への満足度から来るのでしょうかね・・・。
というのも、看護部の一番の自慢は、離職率の低さだそうです。 脳神経外科病院の専門病院というと激しく忙しいイメージがありますが、そういう日も当然あってしかるべきと思いますが、チームワークは抜群だそうで、家庭の都合などで泣く泣く退職される方はいるものの、「いい病院だと思いますよ~」とみな、口をそろえておっしゃってました。
【救急外来】
救急車の搬送は、年間1200件に上る。72床という規模と脳神経外科の単科ということを考えると驚異的な数字だ。 となると現場は雑然するのが普通であるが、どういうわけかきれいに整頓されている。 むしろ、こうしていないと年間1200件ものの救急車を受け入れることができないということの裏返しなのかもしれない。
急激に成長するこの病院から学ぶべき点は非常に多いと感じる。

【リハビリ室】
脳神経外科領域に欠かせないのが「機能回復」である。 聖麗メモリアル病院は、一人あたりの平均在院日数は14.2人である。 これは、脳神経外科を標榜する病院としては驚異的な数字ではないだろうか? 脳神経外科といえば、術後寝たきりになり、ゆっくりリハビリという僕のイメージが一新した。日本トップクラスの医療というものはこういうことなんだと実感しました。早期にリハビリテーションンを介入し、退院するかもしくは、リハビリの専門病院へ転院となる。そのスピードが患者さんの未来を決める。

【サイバーナイフ】
全国で20台しか稼働していないといわれるサイバーナイフ。 そして、日本における北限(2008年現在)がこの聖麗メモリアル病院のサイバーナイフセンターである。 頭頸部の腫瘍にとくに有用なサイバーナイフについての詳しい記述については割愛させていただくが、こちらの施設では、稼働から3年で延べ650人を治療したという。 切らずに治せるというのは、患者さんの夢ですが、もう夢ではなくなりつつあるのですね。 「きれいに腫瘍がなくなると僕らもうれしいです」と担当技師。
手術だけが脳神経外科の治療対象ではない。 脳卒中の超急性期から周手術期そして回復期、そしてサイバーナイフまでそろっている。 足りないものを探すほうが難しい。 これが「脳神経外科」のプライドというところか・・・。
ちなみに脳ドックも擁し、予防医療にも余念がない。
サイバーナイフとは?
取材を担当してくださった日立サイバーナイフセンター室長で診療放射線技師である石森文朗さん(写真左)と手術室看護師長の渡辺将士さん(写真右)
病院が軌道に乗り始めた頃から関わるお二人は、今までがむしゃらに患者さんのことを第一に考えてやってきた。 その結果、患者さんに選ばれる全国有数の病院へ成長させることができた。 そのスタッフの一員として関われたことを誇りに思うと口をそろえる。
頭頸部の治療に圧倒的な威力を見せるサイバーナイフ。 いかに効率よく多くの患者さんを安全に治療できるか・・・ そして脳神経外科病院としてその社会的役割を十分に発揮させ続けるかがこの病院の使命と意欲を見せる石森さん。
そして、患者さんには選ばれる病院となった。 次は、さらに医療従事者に選ばれる病院となれるよう努力していかなければならないと自らも看護協会のセカンドレベルに通う渡辺さん。 脳神経外科に興味がある看護師にどんどん来てほしいと話す。
現状に飽き足らず、さらに上を目指すこの姿勢が聖麗メモリアル病院のスタイルといったところか・・・。
【編集後記】
人が人であるために欠かせないもの、それが「脳」である。そして高次脳機能を維持できなくなることに人は不安を感じる。 ただ、医学は発展し、多くの脳血管疾患はじめ脳腫瘍に至るまで多くの脳血管疾患は治療が可能なレベルにたどりついた。 次にすべきは、その医学をどれだけ社会に還元できるかである。医学は学問であるが、医療は学問だけではない。 ただ、医療に学問がなくなると発展はない。そのバランスがすごくよく取れているのが聖麗メモリアル病院であるという気する。 開設から25年が経過し、我々には計り知れない努力もあったであろう。 ただ、自分の信念を持ちまっすぐ進むことが、何事にも大事なんだと感じました。 ランキングだけが医療の質とは思いませんが、そう遠くない未来、聖麗メモリアル病院が脳神経外科領域の格付けの第1位になる、そんな予感すらする一日でした。 お忙しい中、取材にお付き合いいただきありがとうございました。
あおやぎ