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<病院訪問記>  面白い取り組みを行っている病院を紹介させていただいております。

新古賀クリニック
訪問日  2010年3月6日


福岡県久留米市にある新古賀クリニック、ここに傷口の治療を専門とした創傷治療センターがある。当センターは、創傷治療センター管理師長である石橋理津子さん(写真中央)を中心に、NST専門療法士である大石恵美子さん、糖尿病療養指導士である栗原幸子さん、透析室で勤務されている牛島恵利子さん、光安千代美さん、三上真由美さんら(順不同)、それぞれの専門家で構成されたエキスパートチームだ。

メンバーの方々にインタビューして皆さん、口に出して言っていた言葉が「予防」だ。それぞれの経験の中で、血管病変が原因だったり、透析や糖尿病などで切断を余儀なくされる多くの足を見てきた。フットケアは、足の表面だけの問題ではない。そのことにいち早く気がつき、それぞれがそれぞれの視点からアプローチ、医師ともにチーム医療を確立した。

現在は、週に1回の外来のみの運営だが、高い技術と知識、そして丁寧な処置が口コミで広まり、診療日の拡充を検討している。

人は、歩くことでさまざまな刺激を受けるわけだが、「足の傷」というのは意外にないがしろにしているような気がしないでもない。そして、いざ具合が悪くなったときにどこへかかったらいいのかよくわからない。文明の進化により「傷」を受ける割合は確かに減っただろう。しかし、その重要性は増している。患者さんのニーズにいち早く気がつき、対策を立てられる、素晴らしい施設ですね。
[足の爪の処置をする石橋さん↑]

豪華なイスとオットマンに足を乗せ、ゆったりとした気分で処置を受けることができる。看護師も椅子に座っているため、お互いに苦痛がない。処置を受けることが出来る椅子は4脚、そして必要に合わせ個室も準備。

「質は量に転化する」という言葉があります。「創傷」に特化してチームで診療に当たる。そのことが結果的に質を維持し、高めているのでしょうね。

[フットケアに使用する道具一覧]
[アットホームな待合室]

全体的に言えることですが、「病院らしさ」をあまり感じません。「足の病気ってどこにかかればいいんだろう?」「私みたいな人、ほかにいないよね」などと様々な不安を持っているわけですが、おそらく「ここに来てよかった」と感じてくれるのではないでしょうか?おもてなしの心を持った患者さん中心の医療を行っていると感じます。


[創傷治療センター特製 足浴用バケツ]

こちらの施設で制作したものですが、底に排水口がついています。創傷の治癒には「清潔」が不可欠ですが、そのためには洗浄が必要になります。この洗浄を行う場所が結構設けられていないのですよねぇ。

これは、私見ですが「看護師が何をするべきか」は、すでに確立されていると思います。大事なことは、「どのようにするか」の方法論であり、この点がまだまだ改善の余地があるように感じます。創傷治療センターでは、そういった疑問を少しずつ改善し、患者さんと看護師ほか医療スタッフが働きやすい環境を創造しておられますね。

「やらなければならない看護」ではなく「やりたい看護を提供している」新古賀病院の創傷治療センター、決して多くない傷の専門施設であり、今後も地域のために大いに発展してくれることでしょう。
メディカルアロマセラピー・・・あまり聞き覚えのない言葉だ。メディカルアロマというのは、補充代替医療と呼ばれ、病気の治療や症状の緩和を目的としている。

新古賀クリニックでは、専門の資格を持った看護師が直接患者さんにメディカルアロマを施す。今回取材に応じてくれたのは、吉川幸代さんと田島沙織さん。リンパ浮腫や乳がん、子宮がんの患者さんのリンパの流れを改善させるマッサージや特殊な精油を使用して疲れをいやす。院内の認知度は高く、多忙な勤務をこなしたスタッフがやってくることも・・・。

当然だが、この分野の奥は深く、分厚い専門書に眼を丸くした。高級感溢れるこの施設、極楽です♪
[病院とは思えない豪華な造りのエントランス]

「病は気から」という言葉がありますが、ここまでされると病もな治ってしまうかもしれません!

患者さんの満足は医療従事者の職務満足にもつながり、結果、患者さんによりよい看護を提供できるわけです。この施設を維持するのは簡単ではないと思いますが、考え方によっては高いコストパフォーマンスを誇るのかもしれません。理事長の方針に感銘を受けます。
【編集後記】
今回は、創傷治療センターとメディカルアロマだけの取材となりましたが、ほかにも男女別の健康診断や各種センター(心臓病や脳卒中など)天神会グループの層の厚さに驚きました。医療にしても会社にしても赤字では生きて行くことはできません。しかし、現行の医療制度では、赤字を覚悟しなければ質の良い医療を提供できないこともまた事実です。そのため、多くの施設ではあきらめざるを得ない目標があるわけですが、天神会では見事に「質」を維持しています。多くの病院が見習うべき経営方針であると感じました。
あおやぎ
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