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「食べるということ」

【摂食嚥下障害看護領域】    愛知県立がんセンター病院    青山寿昭さん
青山寿昭さん 看護師16年目、摂食・嚥下障害看護認定看護師をしています。飲み食いが好きで、摂食・嚥下に興味を持ったのは8年ほど前でした。 平成18年に人の勧めで認定看護師になりました。勤務先は愛知県がんセンター中央病院で主にがん患者への嚥下障害に関わっています。
Vol.21  2011年12月 経口摂取でよくある話
直接訓練を開始するといろいろな問題が出てきますよね。
僕がよく体験する問題をいろいろと書いてみます。
まず、食事の味が気に入らずになかなか訓練をしてくれない事はないでしょうか。
病院の食事の味を変えることは非常に困難ですので、楽しみや栄養よりも訓練として考えてもらうように説明しています。
本人が望む食事はゴールに設定し、訓練の状況に合わせて次の段階へ上がる事を十分説明します。
嚥下食を美味しく作ることを難しくしている理由は、嚥下食に均一性・温度・粘度・付着性・噛みやすさなどの条件が付き、さらに再現性や食品管理が必要とされるからです。
しかし、食事の味は嚥下運動や摂取量に影響を与えるため、できる限り美味しい物を提供できるよう取り組みたいですね。

数年前に経口摂取を開始してから体重が減少する患者さんを調べてみました。
術後の嚥下障害で経口摂取を開始前後の体重を比較すると平均約1.5㎏/週の減少を認めました。
必要栄養量が達していないことが原因で、「嚥下食を全量摂取しても必要量に達しない」「長時間の経口摂取により疲労・満腹感がでる」「看護師が摂取できていると判断した」などが原因と考えられました。
そこで、疲労感や満腹感の防止のため訓練を長時間行わずに30~40分程度で終了し、不足分は濃厚流動食を使用し、また安全に摂取できていればカロリーの高い食形態に形態アップなどを取り組みました。
1回/週でカンファレンスを行いその場で栄養や食形態の検討をした結果、体重減少を0.8kg/週に減少させることができました。
カンファレンスを行ってからは病棟の看護師の発言も、「経口摂取=全量食べている」ではなくなり、どれくらい食べているか、「全量摂取=食形態の変更を検討」などへ変化しました。

逆に疲労のために継続時間が5分程度で終了してしまうという報告もよく受けます。
患者さんの評価をして問診をしていると、確かに疲労感もありますが、多くは食形態が患者さんに合っていない場合もあります。
その場合は食形態を再検討して評価してみます。
食形態を変更できない場合、5分間の訓練では改善を見込みにくいので、訓練時間や摂取量に目標を設定してみたり、不足分を間接訓練で補ったりします。
よく受け持ち看護師が食形態を頻回に変更しているのを見かけます。
カンファレンスで理由を聞くと、患者さんが食べれると言った、食べたいと言ったという場合が多く、機能的にどうか検討した例が少ない事に気付きました。
食形態を変更してから、もしくは経口摂取を開始してから1食で次の食形態に変更されている場合もあります。
僕は3日程度、摂取量や摂取時間を観察し、誤嚥がない事を確認してから次の食形態を検討するようにしています。
次の段階の食形態に変更後あまり上手に摂取できない場合、前に摂取していた食形態に戻したり、時間で区切って補助栄養を使用したりします。
食事の価値観は個人やその場面によって変化しますので、訓練時間・栄養・楽しみを上手く調節して計画する必要があります。

嚥下障害患者の経口摂取は摂取量や栄養状態はもちろん、肺炎や窒息には十分注意せねばなりません。
できるだけ患者さんの嗜好に合わせて安全に経口摂取が進むと良いですね。


2年にわたりエッセイを書かせていただきましたが、病院内外での活動が忙しくなり更新することが困難になってきました。
そのためにしばらくお休みを頂くことになりました。
具体的なお休み期間は分かりませんが、充電してまた新たな視点でお話ができればと思っております。
読み返すと恥ずかしく、疑問のある文章もたくさんありました。
読みにくい文章で申し訳ありませんでしたが、またの機会によろしくお願いいたします。
2年間ありがとうございました。
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