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<看護師~ひと~>  インタビュー&お仕事紹介



東京歯科大学市川総合病院

ICU 看護師/臨床工学技士
芹田 晃道さん
訪問日  平成19年9月21日
【病院の概要と本人紹介】
今月の看護師~ひと~は、看護師/臨床工学技士のダブルライセンスで活躍する東京歯科大学市川総合病院の芹田晃道さんです。 ICU4床とCCU4床、HCU6床の計14床の集中治療室。 修士論文をまとめるにあたり、自分のやりたいことが出来る病院」という常人離れした理由で職場を選択し、院内外に大きな影響を及ぼし続けている看護師の臨床の一こまを覗いてきました。
口腔内の吸引
東京歯科大学の付属とあって口腔内の腫瘍の患者さんが多く入室される。 口腔内を丁寧に観察し、術後の様態を見ながら溜まった血液を吸引していた。 吸引は、少なからず苦痛を伴うが、安心感を与えるように顎部を支えていた。

呼吸音のアセスメント
聴診は、肺の悲鳴を聞く重要な技術である。 呼吸管理、全身管理鬼近道は無く、一つ一つの手技を完璧に身につけ、わからないことをそのままにせず、理解する。 その繰り返し繰り返しが芹田さんのようなエキスパートを作る。さしずめ、「ローマは一日にしてならず」と言ったところか。

「適切な鎮静」
患者さんのために
芹田さんの研究テーマのひとつに「適切な鎮静」というのがあるようです。 我々看護師が鎮静のレベルを詳しくモニタリングすれば鎮静剤の絶対的使用量を減らせることができる可能性があります。 写真にはありませんが、BISモニターを使えるのもここの施設の魅力とか? 芹田さんの研究が将来の集中治療看護に大きな進歩を及ぼすかもしれませんね。昼夜無く働く芹田さん。応援してます。

吊り下げ式
バイタルサインモニター、シリンジポンプそして人工呼吸器までもがここでは吊り下げ式。 極力コードが床に這わないことで環境整備を楽にし、結果感染率を低下させる。 十分なスペースが確保され、採光も申し分ない。 もし大きな手術をするならこんな集中治療室がいいと感じた。

看護部長とパチリ
看護部長の安達富美子氏と芹田さんのツーショット。 芹田さんは、看護部長にとって自慢の部下なのでしょう。 のびのびやりたい看護が出来るというのは、看護師にとって至上の喜びですね。
«芹田 晃道さんにインタビュー»
q
どんな看護にやりがいを感じますか?
a
呼吸管理が好きなので、やはり呼吸に関連したケアをしているときはやりがいを感じていますね。
呼吸障害を未然に予防する、起きてしまったら早期に改善できるようにがんばっています。
q
勤務中に心がけていることはありますか?
a
当たり前の事ですが、ミスのないようにでしょうか・・。
q
病棟や病院の呼吸療法に対する期待や理解はどうですか?また、芹田さんが望むものはありますか?
a
理解という点では私もプレゼンテーションが不足していますので何とも言えませんが、期待は多少は感じています。
専門家としてコンサルテーションなど活動時間がもてればいいのですが、現実的ではないかもしれません。
その方面は、集中ケア認定を取得予定の同僚にゆだねたいと思います。
q
呼吸療法認定士(もしくは、これから目指す人)へ、メッセージをお願いいたします。
a
呼吸療法認定は、ゴールではなくスタートラインだと思います。
認定を取得して満足して、研鑽をやめないでがんばっていきましょう。
q
臨床工学技士とのダブルライセンスでもっとも役に立ったことは何ですか?
a
そうですね、医師や臨床工学技士とディスカッションする際には役に立っているかもしれません。
q
様々な経歴(看護師/臨床工学技士/呼吸療法認定士/大学院生/ケアマネージャー)をお持ちですが、そのモチベーションはどこから来るのでしょうか?
a
1:1で患者にあいたいしたときに呼吸ケアに関してはある程度の事はすべて理解して対処していきたいと思ったからですね。特別な、使命感とかはなくある意味では非常にビジネスライクに、給料分以上の仕事はしたいという事です。
q
看護師(医療従事者)としての目標は?
a
かねてから考えていたとおり、養成教育や臨床現場での教育に力を注ぎたいと考えています。
特に医療機器やクリティカルケアに関して、実践的な教育をできるように研鑽を続けていきたいと思います。
q
10年後の自分は?
a
おそらく沖縄で教員をしているんではないかと思います。
沖縄にいるあつい仲間と、研究者と臨床家がタッグを組んで、海外に負けない研究成果を出せる事を証明したいと思っています。
q
好きな言葉と趣味を教えてください。
a
自分を戒める言葉として「木を見て森を見ず」「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉を大事にしています。
少しずつキャリアアップし、先生などと呼ばれるようになってきているのでなおさらですね。
趣味は、酒をおいしく飲む事と沖縄旅行ですね。
ありがとうございました。
【院内勉強会の風景】 血液ガスの解釈  講師 芹田 晃道氏
事前学習
芹田さんの勉強会に出席するには、条件がある。「事前学習」つまり宿題である。 私も、呼吸療法認定士の端くれであるが「考えること」を前提としたレベルの高い問題であった。 効率よく勉強するには、予習が重要であることを芹田さんは知っている。 それを実践するための参加条件なのだろう。それでも40名弱が足を運ぶ。 芹田さんの話がタダで聞けるなんて幸せですよ。

なるほどなるほど。
熱心に耳を傾ける看護師たち。今回は、「血液ガス」についてでしたが、予備知識がないととてもじゃないとついていけない。 ただし、話は臨床に則した話題を中心として構成されており、聞いていて飽きず、しかも、 経験に根拠を示しながら説明してくれるので非常にレベルが高い。真面目に事前学習をやって芹田さんの話を聞く。 当然、それだけでは身にならない。芹田さんの話を意識して思い出しながら「仕事」をすることで気が付くと分かるようになるのでしょう。 この環境、ちょっと羨ましい。

絵に書いて。
ただでさえ難しい呼吸生理、最初から血液ガスのことなんて理解できている人なんていません。 きっと芹田さんも、苦労して勉強してきたのでしょう。だから、参加者の皆さんのわからないところがわかる。 その雰囲気をいち早く察知して、わからないところをそのままにしないように図解する。サービス精神も旺盛です。

答え合わせ。
せっかく事前学習をしてきた。そのことに十分説明することが出題したものの責任と何人かの事前学習を例題に説明。 出題の意図を伝えることで参加者の納得を呼び、詳しい解説を加える。時間の関係で全員の回答をすることは出来ない。 参加してくれた人には漏れなく芹田さんの「模範解答」がいただけるようです。きっと皆さんの「宝物」になることでしょう。

「はい、あなた。」
気が抜けない講義である。勉強会は、参加することが目的ではなく、「理解する」ことが目的である。 そう考えれば、「指されない」より「指されて質問された」ほうが当然、理解は深まる。 正直、指された人は「げっ」と思うのかもしれませんが本当は、ラッキーなのですよ。 余談ですが、小学校の児童が授業中に先生に指された回数と児童の成績は比例するとか?

疲れ知らず。
本当に「話す」のが好きなんだなぁと感じた。自分はわかっている。それを分からない人に話すのってかなり大変なんだと思います。 それでも、会場全体に気を配り、必要に応じて図解し、ペースを配分しながら話を進める。2時間近くしゃべってこの余裕。

練習問題
参加者の事前学習を参考にpH、PaCO2、PaO2、HCO3-、BEをパソコンで投影し、みんなで考えてもらう。 実際に病棟で疑問に思った血液ガスデータを共同でケーススタディ。本物の患者さんのデータだけに臨場感がある。 データだけをみて患者背景をぴたりとあててしまう芹田さんがだ、それでも「データだけにとらわれすぎないで」と釘を刺す。 修羅場をくぐってきた経験がそう言わせるのでしょう。

参加者の皆様とパチリ。
芹田さんは、目をつぶってしまっていますが他の皆さんの表情がいいのでこの写真を採用しました。 看護師・理学療法士で呼吸管理に興味のある皆様。つらい勤務でも、むずかしい勉強でも、この笑顔があれば大丈夫ですね。 芹田さんに教えてもらったことを、後輩に伝えていく。そんな風習が出来るといいですね。


【東京歯科大学市川総合病院】
所在地 〒272-8513 千葉県市川市菅野5-11-13
TEL 047-322-0151(代表)




きれいに整備された緑に囲まれる東京歯科大学市川総合病院
大学の系列病院というとかしこまった雰囲気があり少しも緊張するが緑に癒され、緊張するのも忘れて取材を行うことが出来た。

【病床数】医療法承認病床数  570床
【標榜診療科】  20科
内科  消化器科  循環器科  小児科  皮膚科
精神神経科  外科  脳神経外科  心臓血管外科
整形外科  泌尿器科  耳鼻咽喉科  産婦人科  眼科
放射線科  歯科・口腔外科  リハビリテーション科
麻酔科  形成外科外来  女性相談外来
口腔がんセンター  糖尿病・内分泌センター
リプロダクションセンター  脊椎・脊髄病センター
角膜センター
【編集後記】
「知識欲」もここまで行くんだというお手本のような人でした。
芹田さんとは「教育が何より大事」という点で意見が一致するよき理解者であり、教育と臨床の実践では見習うところの多い大先輩です。 芹田さんは、多くの病院や呼吸器メーカーで経験を積み、毎週のように全国各地を講演等で飛び回っています。 呼吸管理を専門としており、臨床工学技士そして呼吸療法認定士として御活躍ですが集中治療だけでなく精神科看護や医療法律にも長けており、現在は大学院の修士課程の学生でもあります。 様々なことにチャレンジしてしている看護師を私は知っています。 この記事を読んで刺激を受け、芹田さんを超える看護師がどんどん出てくることを願っています。
あおやぎ