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<看護師~ひと~>  インタビュー&お仕事紹介



東京医科大学病院

放射線診断部
看護師/日本IVR学会 認定IVR看護師
野口 純子さん
訪問日  平成21年6月5日
【本人紹介】
東京のど真ん中にある東京医科大学病院、ここにIVR看護に熱いひとりの看護師がいる。 まず、IVRという言葉は、医療従事者でも知らない人もいるだろう。 IVRとは、インターベンショナルラジオロジーの略で放射線を使用した治療を行うことを指すが、近年、診断機器や治療機器の発達に伴い、目覚ましい進歩を遂げている。 逆に言うと歴史は浅く、特に看護はまだ体系化されているとは言い難い。 しかし、医療はどんどん複雑高度化し、患者さんは増える。つまり、そこには確実に「看護」があるのだ。 IVR看護領域において第一線で活躍する野口さんの職場にお邪魔してきました。
野口さんに会うのは、これで二度目、前回はIVR研究会でお会いした。 彼女の印象は常に「笑顔」が絶えないこと。つらいことや大変なことなんてないんじゃないかと思うくらい。 しかし、いざ「看護」となると目つきが変わる。 この真剣な表情に支えられ、医師も患者さんも安心して医療を行うことができるのですね。


IVRは、予定されているものばかりとは限らない。緊急で処置を行わなければ生命が危ない疾患もIVRの対象となる。 慣れた手つきで素早く準備を行い、入室に備える。


緊急でIVRを行うとなれば、限られた時間、限られた人材で対処していかなければならない。 造影剤を準備しつつ、医師や放射線技師とコミュニケーションをとり、患者さんの情報を集める。 そのためには看護師には多くの知識が必要とされる。
ただ、知識や技術だけではない。以前、野口さんがたまたま休日に病院に来たときに緊急IVRをやっていたそうだ。 その時は、看護師が不在で治療が進められていた。医療そのものに問題はなかったものの、 局所麻酔で不安が絶頂に達していた患者さんは、野口さんの声を聞くなり、「よかった」と急に不安を口にしだしたという。 その時に野口さんは、「ここにも看護があるんだ」と再確認し、自分の役割が明確になったという。
写真は、造影剤を準備する野口さん


IVRは、低侵襲治療の代名詞、針穴一つで命を助ける。 しかし、体の中、つまり目に見えないところでは、放射線を通してダイナミックな治療が展開されている。 それほど血は出ない。そうすると、一見何も起こらないようにも感じてしまう。 しかし、その考えは間違っている。一歩間違えば生命の危険も十分あり得る。 そんなとき、看護師に必要なのは急変対応の知識と技術。 野口さんは、院内のCPRとAEDコースのインストラクターの資格を持つ。 自分で実施できるのは当たり前、他のスタッフにも指導できる知識を兼ね備える。 こうして患者さんの安全を確保しているのですね。


写真は、患者さんにIVRの説明をするイメージです。
カテーテル室の実際の写真を見て、検査や治療の流れを説明する。 場合によっては、カテーテル室の見学もできるそうだ。
IVRは、時に患者さんの協力が必要となる。たとえば「動かないこと」だ。 人間「動くな」と言われてもなかなか難しい。事実、患者さんが動いてしまい、 治療がスムースに行かなかったこともあったそうだ。 しかし、「理由を丁寧に説明すること」を徹底し、徐々に患者さんの理解度が上がっていったという。 医師からも「以前に比べ、検査がやりやすくなった」とすこぶる好評だ。
患者さんにとってカテーテルの検査や治療は、明らかな非日常で想像することも難しい。不安も強いだろう。 そういった問題を解決し、IVR看護とは何なのかを日々考え、行動している。


こちらは、心房細動に対するアブレーションの説明図

患者さんにわかりやすい言葉や表現で記載されている。イラストも入っているので読みやすい。





野口さんの心配は、夜間や休日のカテーテル室業務だ。理由はただ一つ、看護師がいないのだ。 しかし、これは今の病院事情を考えると仕方がない。7:1看護の実行が病院の経営的・運営的な質を決定する。 つまり、看護師を病棟に手厚く配置することがいま、病院に求められる一つの姿となっている。 しかし、カテーテル室にも看護はあり、看護師は必要だと野口さんは、力説する。 医師や放射線技師には、看護師の代わりとなることはできない。 ただ、時を選ばず患者さんはやってくる。 「自分がいなくても、質を維持する」ため、きちんと整理整頓し、緊急時に必要なものもひとまとめにする。 「真のリーダーとは、その人が存在しなくても、組織が機能すること」と聞いたことがある。 看護師がいなくても、最低限の看護が提供できる、感じられる、そんなカテーテル室が、東京医大の画像診断部なのかもしれませんね。


【東京医科大学病院 画像診断部の紹介】





最新の医療機器
血管造影室は、3部屋、そのほかCCUと同じフロアに心臓カテーテル室がある。




東京医科大学病院には、CVラインセンターがある。院内でCV(中心静脈)ラインを確保する場合、救命、ICU等特別な場合を除いたすべての患者さんがCVセンターで実施することになる。 写真左を見ていただければわかるように、エコーと透視(機器)が配置され、除細動器やドレナージセットも準備できている。 私は、ある手術の際に「鎖骨下静脈」を見たことがありますが、非常に細い。 エコーや透視を使用しなくても、中心静脈にラインを挿入することは技術的には可能だが、100%の安全は確保できない。 そのため、院内のすべてのCVライン挿入事例に対し、当センターを利用する。 利用規則には、厳しいガイドラインがあり、患者さんの絶対の安全が守られている。 日本シャーウッド株式会社さんの情報誌にも、紹介されているが、今後、全国での普及が望まれる。 上記情報誌には、「CVラインセンターにおける看護師の役割」と題して野口さんの記事がある。 入室前の同意書の確認や患者様への準備といった具体的な内容が記載されており、病棟看護師にとっても必見の記事だ。
日本シャーウッド株式会社 Kangaroo Newsはこちら


多忙にも関わらず、「写真を撮らせて下さい」とお願いすると笑顔で対応して下さいました。 大学病院の画像診断部なのでその忙しさは想像するに難しくない。 野口さんいわく「抜群のチームワーク」とのこと。宴会が近くなるとそわそわする主任さんを筆頭に、楽しく看護を実践されているそうです。
【編集後記】
日本IVR看護研究会で活躍する野口さんにお声掛けさせていただき、今回の取材となりました。 手術室看護とIVR看護は、医師が近くにいて、基本的に治療のサポートがメイン業務となるところが似ていると感じました。 しかし、そこには、確実に看護があるんですよね。 今、7:1看護により、病院は、手術室、透析、外来そしてカテーテル室からどんどん看護師を引き上げています。 7:1看護自体に異論はありません。むしろそうすべきと思います。問題は、看護師の絶対数が足りていないことです。 IVR看護を含め、多くの看護師がやりがいのある看護を実践できる日がやってくることを望みます。
あおやぎ