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<学会・イベント訪問記>

市民公開講座 老化・動脈硬化・心臓病への挑戦
【共催】 MITOプライマリケア研究会、日本ベーリンガーインゲルハイム(株)
【後援】 水戸市医師会、東茨城郡医師会、茨城県薬剤師会(水戸支部)
訪問日 2008年11月29日
【はじめに】
心臓血管外科医と循環器内科の専門家の立場から、市民公開講座が開かれた。今回、定員は195名であったにもかかわらず、応募は700名を超えたという。近年、生活習慣病という言葉や、メタボリック症候群という言葉が市民権を得、市民の健康に対する意識も非常に高まって来たことが実によく表れており、熱心に聴き入る聴衆が目立った。
一般公演
「抗加齢医学を利用した生活習慣病予防」
-アンチエイジングは美容だけじゃない-

誠潤会城北病院院長
心臓血管外科部長
土田 博光先生


土田医師は、心臓血管外科医、そして日本抗加齢医学会認定専門医の立場から動脈硬化予防について講演された。
まずはじめに、
①不必要な侵襲治療が先行されやすい医療事情
②必要な侵襲治療がなされていない事情
③一般市民の予防医学に対する認識が低い
という提言があった。
実際のCTや、MRIの写真を用いて、先生が講義をしていると市民のみなさんは身を乗り出して聞いていました。

血管系の病気とその治療(薬物、リハビリテーション)の紹介を行うとともに特に予防医学の必要性を強調していました。

「アンチエイジングは、美容医学という意味合いでクローズアップされている。しかし、実際には老化現象を予防して治療する医学」であり、アンチエイジングと美容医学が混同されている問題の現状を紹介してくれた。

今日から出来るアンチエイジングとして、フリーラジカルからの防御と題して、
①禁煙
②排気ガス
③日常生活のストレス
④大気汚染
を予防することが大切であると、説明。
特に、禁煙の必要性を強調し、話を締めくくりました。
特別公演
「心臓病 運動するのとしないの どっちがいいの?」

群馬県立心臓血管センター
循環器内科
心臓リハビリテーション部長
東京医科大学霞ヶ浦病院
リハビリテーション部客員教授
安達 仁先生


特別講演で安達医師は、循環器内科の立場と日本心臓リハビリテーション学会の理事という立場から、心臓リハビリテーションについて約1時間講演した。司会者からの「心臓リハビリテーションでは日本で1番有名な医者」という紹介もあり、非常に内容が豊富で分かりやすい内容でした。
心疾患の患者でも、健康な人でも、適切な運動は動脈硬化の予防だけではなく、狭心症、心筋梗塞、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症などの血管閉塞疾患や 心不全にもきわめて有効な治療法であると実例を用いて紹介してくださいました。
たとえば、その人の運動強度に合わせ、点滴をしながらベッド上で足を動かす、病室内を数歩歩き始めるなど、具体的な「運動」の紹介や心疾患の方にも、レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)を行うことが治療の観点から重要であることを説明。点滴や酸素を投与中であっても、立ち上がりながら、ふくらはぎに力を入れること、ゴムチューブの引き伸ばしなどで、息切れが生じる程度のゆっくりと息を吐きながら行うといった注意点も交えながら説明を行った。
また、身近に行えるトレーニングとして散歩のときにトークテスト(話をする際に疲労を感じるテスト)を勧めていた。夫婦で散歩をしながらやると心負荷がチェックできると、説明があり聴衆者は頷いていた。
最後に先生は「運動は、どこでやっても、器具が何でも、息が軽く切れる程度の有酸素運動、レジスタンストレーニングをその人のレベルにあった強さで行うことで続ければ、心臓病になりたくない人、心臓病になって回復した人、心臓病の治療したい人すべての目的の人に当てはまる。『運動は薬にしたら、一番の薬』だが、これらを達成するためには地道な努力が必要」と講演を締めくくった。
【編集後記】
参加者に感想を尋ねると、「心臓病というと「絶対安静」が常識だと思っていた。しかし、今日の話を聞いて運動を上手に組み合わせることが「治療」になるということを初めて知ることができた。非常にためになりました」とのことだった。水戸市内の総合病院から参加した理学療法士(29)さんも、「自分の勤める病院では心臓リハビリテーションが積極的に行われていない。そのため、安達先生や、所属の循環器の医者に相談してみる」と今後の仕事に意欲を燃やしていた。医師をはじめとする医療従事者は、多くの知識と経験を持っている。その知識や経験を少しでも社会に還元できた今回の試みは、非常に有意義だったと感じる。今後も、同様の試みを多くの診療科で行ってくれることを期待したい。
あおやぎ