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「食べるということ」

【摂食嚥下障害看護領域】    愛知県立がんセンター病院    青山寿昭さん
青山寿昭さん 看護師16年目、摂食・嚥下障害看護認定看護師をしています。飲み食いが好きで、摂食・嚥下に興味を持ったのは8年ほど前でした。 平成18年に人の勧めで認定看護師になりました。勤務先は愛知県がんセンター中央病院で主にがん患者への嚥下障害に関わっています。
Vol.18  2011年6月 「病棟スタッフによる口腔機能評価と訓練」
嚥下機能の評価や訓練は言語聴覚士が行っている施設は多いと思います。しかし、僕の働いている施設では嚥下訓練を行う言語聴覚士が勤務しておりません。そのため、嚥下訓練は病棟看護師が行っています。嚥下訓練を行うにあたり、やみくもに開始することはできませんので、まず嚥下機能を評価する必要があります。病棟の全スタッフが嚥下関連組織全ての評価を行うことは困難であるため、病棟スタッフは口腔機能の評価を行い、口腔機能を改善させる目的の基礎訓練を立案、実行しています。咽頭や喉頭は摂食・嚥下障害看護認定看護師や嚥下障害の知識を持った数人のスタッフで評価・訓練の立案を行い、病棟スタッフとともに基礎訓練を行っています。

頭頸部癌術後患者は手術により口腔内の器質的変化がおこっています。回復する見込みのない機能もありますので、口腔内の器質的変化を把握したうえで口腔機能を評価する必要があります。器質的変化を把握するために評価表には口腔内をデッサンできるような形式とし、同時に汚染具合も評価してきます。当センターでは図1のような図を使用して口腔内を評価しています。

右図は実際に使用している図で口腔内のデッサンを行い、皮弁のサイズや口腔内の汚染状況も評価します。舌は左右運動を0~3、挙上を縦軸で評価、口唇閉鎖を○×で評価します。
実際の中咽頭癌術後の口腔内

図1
口唇の評価
「イ」や「ウ」の口唇運動の左右差
(写真は「イ」)
舌の評価
舌を出来るだけ前に突出した状態での左右への偏移(偏移側が麻痺)
口腔内安静時の偏移(偏移側が健側)
安静時 突出時

嚥下訓練には食物を用いない基礎訓練(間接訓練)と食物を用いる摂食訓練(直接訓練)があります。 頭頸部癌術後など口腔咽喉頭食道に創のある場合は主治医の許可が必要ですが、基礎訓練は比較的リスクが少なく、手技が容易であるため看護師も取り組みやすい訓練と言えます。咽頭・喉頭の評価はなかなか手が回りませんが、口腔内の評価・訓練立案・実施は病棟スタッフ全てが行えることを目標に取り組んでいます。

基礎訓練は摂食訓練に対して効果が目に見えにくく、実際に効果的な訓練であるのかを評価しながら続ける必要があり、毎週カンファレンスで評価しながら訓練を進めています。

口腔咽頭がん術後嚥下障害の場合、咽頭期惹起遅延が起こるために口腔内のアイスマッサージをベースで行い、評価の結果で基礎訓練を組み合わせていきます。

実際に当センターで行っている基礎訓練は↓↓↓
http://boyakikango.blog.shinobi.jp/Page/2/
看護師は自主的に口腔ケアや基礎訓練を行うことができます。施設により嚥下障害に関わる看護師の役割は変化しますが、口腔機能訓練は病棟看護師で行うべきではないかと思います。ほとんどの施設で適切な口腔ケアを行えることが求められますので、口腔ケアと同時に口腔機能の評価と訓練を行えるようにすることで看護師でも十分関わることができると思います。その上で専門的な知識を持つ言語聴覚士や認定看護師と共に嚥下訓練を行うことで、より質の高い嚥下訓練が行えるのではないでしょうか。