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「食べるということ」

【摂食嚥下障害看護領域】    愛知県立がんセンター病院    青山寿昭さん
青山寿昭さん 看護師16年目、摂食・嚥下障害看護認定看護師をしています。飲み食いが好きで、摂食・嚥下に興味を持ったのは8年ほど前でした。 平成18年に人の勧めで認定看護師になりました。勤務先は愛知県がんセンター中央病院で主にがん患者への嚥下障害に関わっています。
Vol.19  2011年8月 「チームめし屋へ」
この原稿を書き始めてちょうど2年が経ちます。初めの原稿を見ると少し笑えますね(誤字脱字も多いし)。この2年、がん専門病院で食べる事を考えてきました。僕が認定看護師になった5年前と今では変化したと感じる事があります。毎年、実習に来る学生に嚥下障害の講義をしてきましたが、5年前は「自分にとっての食事とは何か?」との質問に戸惑いながら3分の1くらいの学生は「栄養摂取」と答えていました。しかし、今年の学生は全員が「楽しみ」と答えました。それだけで判断するわけではありませんが、日本人にとって食事の意義というのは変化していることをよく事を感じます。

「食事」は「楽しみ」になりつつありますが、「栄養摂取」はどうでしょうか?普通の人は「食事」をし、栄養摂取のために胃管を入れたり、点滴をしたりはしませんので、「栄養摂取」は「食事」ですよね。しかし、「食事」=「楽しみ」=「栄養摂取」とはいきませんし、そこが難しいところでしょうね。楽しみのない食事は全く進まず、嫌いな物は食べなくてもよいと思っている人も少なくありません。嚥下食も美味しくないと食べてもらえないというケースも非常に増えています。そういった理由からリハビリが進まなかったり栄養状態の改善が見られずに悩んだりします。少し昔は栄養だから、もったいないから、訓練だからと頑張って摂取してくれる患者さんが多かったのですが、今後は楽しみがないとなかなか摂取してもらえない世の中になりつつあることを感じます。

外来で関わった患者さんの奥さんで旦那さんに一生懸命嚥下食を作った方がみえました。少しでも美味しい物をと考えていろいろな工夫をされていました。その患者さんと奥さんの関わりで僕も勉強しています。例えば、ミキサー食を作るにあたってミキサーの性能は大変重要であること。ミキサー食で粘度が高い物や低い物を選択して推奨できますが、ミキサーの種類までは分かりません。ミキサーによっては鰻の小骨まで砕けるものと砕けないものがあったりするようです。よいミキサーを使用していると鰻なども摂取でき、食事の幅が広がります。その他、米をミキサーにかけるにしても米の種類によって付着性がずいぶんと違うそうです。奥さんに味や物性を試行錯誤しながら食事を作成してもらっている旦那さんは、ミキサー食しか摂取できませんが美味しい物を食べる事ができると言っていました。ほとんどの患者さんは退院後に体重減少があるのですが、そのおかげで濃厚流動食などの補助栄養を行うことなく退院後の体重減少も見られません。病院や施設など大人数へ提供する美味しい嚥下食というのは大きな課題ですね。
この2年間で僕の病院のスタッフも変化し、1人めし屋からチームめし屋(自称)にグレードアップしました。摂食・嚥下障害看護認定看護師が2人になり、さらにもう1人、今年の摂食・嚥下障害看護認定看護師教育課程に通うことになりました。来年からは3人で活動していくことになりそうです。言語聴覚士は相変わらず採用してくれませんが、病棟スタッフで4人、歯科衛生士1人の計8人の超変形嚥下チームで活動しています。役割は、認定看護師がスクリーニング、訓練内容検討、食形態・栄養の検討を行い、歯科衛生士が直接・間接訓練と口腔ケアを担当します。病棟看護師はリスク管理や嚥下障害患者の抽出、病棟看護師への訓練方法など簡単な指導を担当します。メンバーが増え、関わることができる患者さんの幅も広がり、少しずつ成長していることを実感します。まだまだ足らないことはたくさんありますが、これからもぼちぼちと進んでいきたいと思います。